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アトピー性皮膚炎とは増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患で、食物や家のダニ、ホコリなどのアレルゲンに対してアレルギーを起こしやすい体質の人に生ずる慢性の難治性の湿疹をいいます。
 
 
 


アトピー性皮膚炎とは増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ。アトピー素因とは気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれか、あるいは複数の疾患を家族歴や既往歴に有し、またはIgEを産生しやすい素因がある(日本皮膚科学会、アトピー性皮膚炎の定義・診断基準より)と定義されます。

簡単にいうと、食物や家のダニ、ホコリなどのアレルゲンに対してアレルギーを起こしやすい体質の人に生ずる慢性の難治性の湿疹のことをいいます。


アトピー性皮膚炎は皮膚の生理学的な異常(皮膚の乾燥とバリアー機能異常)に対しては保湿剤外用を中心としたスキンケアを行い、特異的あるいは非特異的アレルギー機序に基づく炎症に対してはステロイド剤や免疫抑制剤を中心とした外用療法を行い、掻痒に対しては抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤を併用し、多種類の増悪因子(発汗、ストレス、食物、環境因子、細菌、真菌など)に対しては可能な限り排除すること、これらを基本方針としています。

すなわちアトピー性皮膚炎は遺伝的素因(全ての人が該当するわけではないが)を含んだ多要因性疾患であり、疾患そのもののコントロールは充分可能であるが、完治させる薬物療法は現段階ではありません。あくまでもステロイド剤を主軸とした対症療法が原則といえます。


副腎皮質ホルモン(ステロイド)の外用剤は、もともと腎臓の上にある副腎という臓器が分泌しているハイドロコーチゾン(コルチゾール)というホルモンとほぼ同一作用を有し、その作用、特に炎症を抑える作用だけを強力に合成(人工的に)したものです。

ステロイドは強力な免疫・炎症抑制作用があり、皮膚科領域だけでも多くの疾患に効果があります。皮膚科で投与されるステロイドはほとんどが外用剤であり、内服によるような全身的副作用はまず起こりません。たとえば、気管支喘息やリウマチなどの膠原病では吸入薬や内服薬として長期間投与されるために、副作用に留意しなくてはなりません。

近年では免疫抑制剤(タクロリムス軟膏)と称してステロイドを全く含有しない軟膏も使用されていますが、多くの皮膚科医はまずステロイドを中心として治療を開始し、症状の軽快に応じてステロイド剤のランクダウンを行い、局所的副作用の発現に注意しながら治療しています。


ステロイドアクネ、ステロイド潮紅(酒さ様皮膚炎)、多毛、皮膚萎縮、皮膚感染症の誘発などがあります。外用部皮膚の免疫力が低下するためにアクネ(にきび)やヘルペスやとびひや白癬(かび)ができやすくなることがあります。このうち酒さ様皮膚炎とはステロイドの不適切長期連用によって、顔に潮紅、毛細血管拡張、丘疹、膿疱、皮膚萎縮などを生ずるもので、痒みを伴わないほてり感があります。
かつては肌がツルツルになることから化粧品の下地として使用し続けた結果発症した女性患者がほとんどでしたが、今は少なくなりました。

また皮膚の炎症が治まった後に色素が残り黒くなることがありますが、これは「炎症後色素沈着」といって、掻痒のコントロール不良のため慢性の過刺激(こすりすぎ、掻き壊し)によるバリアー破壊(後述)が基本にあって、メラニンの過剰産生が持続した結果生じたもので、ステロイド外用によって直上の皮膚の炎症が抑えられた結果赤味がなくなることによって隠されていた色素沈着が目立ってくることで、ステロイドの副作用ではありません。慢性の炎症が持続する限りなかなか消褪しません。つまり炎症後色素沈着が見られるということは湿疹の時に痒みに対するコントロールがうまくいっていないかもしくは湿疹自体が重症である、と考えるべきです。すなわち、アトピー性皮膚炎の色素沈着はバリアー破壊に起因する慢性過刺激性炎症性色素沈着症なのであって、ステロイド外用剤の副作用ではないのです。

ステロイド外用ではその血管収縮作用のために皮膚が白く抜けたように見えることがあり、外用によって皮膚が黒くなることはなくむしろ皮膚が一時的に蒼白化することが局所的副作用です。さらにステロイドが皮膚に蓄積されると心配される方もおりますが、そのようなことは全くありません。なぜなら治療経過中にステロイド外用剤を突然中止することで症状の悪化を招くことが、皮膚に蓄積されていない証拠といえます。さらにステロイドの全身投与による副作用として消化性潰瘍の増悪、易感染性、耐糖能悪化、骨粗しょう症、満月様顔貌、緑内障誘発、高血圧、急性副腎不全などがありますが、これらの症状が外用薬で起こることは立証されていません。


アトピー性皮膚炎では炎症(湿疹性病変)と皮膚バリアー機能破綻(ドライスキン)が悪循環をきたして皮疹の難治化をきたしています。すなわちバリアー機能の異常が外界からの物質の侵入を容易にして炎症反応を引き起こし、それに掻破が加わり再びバリアー機能の破綻をきたすと考えられます。したがって炎症反応を抑えるステロイドやタクロリムス外用剤と種々の保湿剤によるドライスキンの改善は、アトピー性皮膚炎治療の2本柱といえます。


皮膚最外層の角層の保湿を行う機能を総称して皮膚バリアー機能といい、その担い手は主に皮脂と角質細胞間脂質と考えられています。皮脂とは皮脂腺から分泌され皮膚角層の表面を覆い、皮膚表面からの水分の蒸散を防ぐことにより角層の水分保持を行っています。角質細胞間脂質は個々の角化細胞が角層細胞へ移行するときに作り出す物質で、セラミド(スフィンゴ脂質)を主成分とします。皮膚バリアー機能の重要な点は皮脂や角質細胞間脂質が皮膚からの水分蒸発を抑制しているだけでなく、種々の抗原の侵入に対して防御機能の役割をも担っていることにあります。すなわちバリアー機能の破綻は単にドライスキンになるにとどまらず、抗原の侵入によるアレルギー反応の惹起を招来します。それゆえに日頃の保湿剤による皮膚バリアー機能の修復が必要となります。

最近、角層形成に大変重要なフィラグリンというたんぱく質を作ることの出来ないアトピー性皮膚炎患者さんの存在が分かってきました。フィラグリンとは表皮の顆粒細胞で産生されるたんぱく質の一種で、ケラチンとならんで皮膚バリアー機能にかかせない角層形成に重要な役割を担っています。フィラグリン形成不全は同時に角層形成不全となり、さらに皮膚バリアー機能低下による各種皮膚炎を招来します。アトピー性皮膚炎の約2〜3割でフィラグリン遺伝子異常が見つかっています。


尿素製剤・・尿素は天然保湿因子のひとつであり、角層蛋白の水分結合能を高めることによって保湿効果を発揮します。また角層蛋白を変性融解し、滑らかにする潤滑油としての働きもありますが、結果として同時にダニなどの蛋白抗原の皮膚透過性を亢進させるため、掻破痕の激しいアトピー性皮膚炎の保湿剤としては不向きといえます。
ヘパリン類似物質・・ムコ多糖体の多硫酸エステルでモイスチュライザー効果で保湿します。
古典的外用剤・・ワセリンなどの油脂性軟膏基剤は被膜形成により水分蒸散を防ぐエモリエント効果で保湿します。その他としてオリーブ油、グリセリン、亜鉛華軟膏などがあります。


非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は急性皮膚炎に対しては明らかに有効性を認めますが、アトピー性皮膚炎という多種のアレルゲンに繰り返し暴露されてしまう結果として確立された慢性の接触皮膚炎に類似した病変(免疫反応の立場から)では、逆に悪化させてしまうことが動物実験でも以前から証明されています。とりわけブフェキサマク(商品名 アンダーム軟膏)という外用剤は、高頻度に局所のかぶれをおこすことがかなり以前から報告されており、急性の皮膚炎以外に皮膚科医が処方することはまずありません(現在販売中止)。

ステロイド恐怖症のあまり、この薬がステロイド剤にかわる安全な外用剤と信じられていることは大変残念なことですが、そればかりでなくステロイド剤の副作用軽減の目的で、NSAIDs剤と混合(容器詰めなのでわからない)で処方され、NSAIDsの増悪作用がマスクされてしまい、結果として長期間外用され続くことは由々しき問題といえます。NSAIDsがただでさえ低下しているアトピー性皮膚炎の自然免疫担当細胞(NK細胞、γδT細胞など)の機能をさらに抑制することは、臨床的にヘルペスなどのウイルス感染症の増悪を招来します。

それよりもスキンケアーの重要性が強調されてきている現在、NSAIDsを外用するメリットは全くなく、保湿剤の単独・混合外用の方がはるかに治療に効果的といえます。


ステロイドの元々の作用はリンパ球やマクロファージからのサイトカイン産生を抑制し、顆粒球や肥満細胞の機能を阻害することによって、免疫反応に基づく炎症を鎮めると考えられています。現在のところステロイド剤以上の効果のある抗炎症剤はありません。

ステロイド剤は「一時抑えに過ぎない」というのはステロイド剤の不適切治療、すなわち多くの場合、ステロイド恐怖症のあまり局所の炎症を充分に抑えていない段階での急激な中止に基づくもので、リバウンドとはいいません。リバウンドの本来の定義は、ステロイド内服薬の急激な中止による原疾患の悪化を意味し、外用剤に対する用語ではありません。いまでは外用剤に対しても多くの皮膚科医が一般化して使用してしまったために、ステロイド外用剤はリバウンドのある恐い薬、というマイナスイメージを与えてしまったことは皮膚科医の責任でもあります。ステロド剤の恐いイメージのために、皮疹が少しでも軽快するとすぐ中止してしまうために皮疹はすぐ再燃し、一時抑えの感をますます強くします。

急激な治療の中止による皮疹の急性増悪がステロイドの欠陥と誤認されていますが、高血圧症や糖尿病の患者さんが勝手に治療を中断してしまって血圧や血糖値が上昇したりしてしまうことと同じことなのです。中止の仕方が不適切であればあるほど病気が悪化することはどんな病気でも基本的には同じです。したがって、炎症が充分に鎮まったら(痒み、赤みの消退等)一挙に中止するのでなく、3回/週、2回/週と間欠的に外用したり、弱いステロイド剤にランクダウンしていくことがステロイド剤の効果持続、副作用軽減につながります。ステロイド剤の強弱、塗布部位皮膚の厚さ、外用期間等の条件を充分検討した上で、さらには近年免疫抑制剤といった非ステロイド剤(商品名 プロトピック軟膏)との併用(混合ではない)等、状況に応じて皮膚科医は治療しますので、一人歩きしたステロイド恐怖症はやがて払拭されると考えられます。


末梢性と中枢性の二つがありますが、ほとんどは末梢性のかゆみです。これは表皮―真皮境界部に存在する知覚神経線維(C線維)の神経終末(かゆみレセプター)が物理的、化学的刺激によって活性化されて生じるかゆみです。物理的刺激とは掻くという機械的刺激や温熱による刺激をいいますが、ドライスキンを示すアトピー性皮膚炎の場合は、本来表皮―真皮境界部で終わっているはずの知覚神経線維の終末が角層直下まで伸びているため、容易に外的刺激を受けることが分かりました。このドライスキンに由来するかゆみは、ヒスタミンなどの化学伝達物質の仲介を必要としません。つまり抗ヒスタミン剤は無効で、保湿剤がかゆみに奏効します。

一般的な通常のかゆみは化学伝達物質による化学的刺激にもとづくもので、伝達物質としてはアミン類(ヒスタミン、セロトニン)、ペプチド(サブスタンスP、エンドルフィン)、プロテイナーゼ(キマーゼ、トリプターゼ)などがあります。すなわちアレルギー炎症に由来するかゆみであり、この場合は抗ヒスタミン剤が奏効します。これに対して中枢性のかゆみもアトピー性皮膚炎に関与しているとされています。アトピー性皮膚炎の患者さんの血液中にオピオイドペプチドの一つであるβエンドルフィンが増加していたり、そのレセプターの存在が証明されています。この場合は抗ヒスタミン剤は無効で、μ―レセプター拮抗薬が奏効します。このようにアトピー性皮膚炎では様々な因子の関与によってかゆみが生じています。


アトピー性皮膚炎患者はIgE抗体を産生しやすい体質を一般的に有していますが、抗原特異的IgE抗体の検索結果がイコール原因ではありません。IgE−RASTはアレルギーのなかでも即時型反応(原因物質の関与等ですぐ反応する、多くは20〜30分以内)の結果をみているだけで、たとえば食事アレルギーやアレルギー性蕁麻疹などの場合は診断的価値がありますが、アトピー性皮膚炎のような遅延型アレルギー反応(多くは48時間前後)主体の皮膚炎では決め手とはなり得ません。

たとえば食物抗原の代表である牛乳、卵白などは小学校入学頃より陽性反応は認められなくなり、これに代わってその後は環境抗原のダニ、ハウスダストなどの抗体価が上昇してきます。このように年齢層によって特異的IgE抗体産生に差が認められることが以前より明らかにされています。もしダニが原因なら、卵白が原因ならそれぞれアトピー性皮膚炎ではなくて、ダニ皮膚炎、卵白皮膚炎と呼称すべきです。まったく皮膚炎と無縁の人でもIgE−RAST陽性者はたくさん存在します。

過去においては血液検査の結果のみによる過度の思い込みによる食事制限等で、成長障害をきたした小児アトピー性皮膚炎の患者さんも存在しました。検査結果はあくまでも参考程度でいかがでしょうか。ただしIgE−RAST検査の結果、たとえばダニで強陽性の人は掃除をしっかりすること、また卵白で強陽性の人は摂取をできるだけ減らすこと、これらの努力によってアレルゲンを回避することで皮膚症状の発現が多少軽減されることは、症例によって認められることは事実です。


筑波山の土壌より分離された放線菌Streptomyces tsukubaenesisが産生するマクロライド骨格を有する化合物で、これまでのステロイド軟膏と異なり、T細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制することによって免疫抑制作用を発揮します。

T細胞活性化の抑制のほかに、皮膚の抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞の抗原提示の抑制、肥満細胞、好塩基球からのヒスタミン遊離の抑制等の作用も併せ持っています。この軟膏の長所として1、ステロイド軟膏のストロングクラスの抗炎症作用を有しながら皮膚萎縮、毛細血管拡張の副作用がないため、顔面、頚部に対して安心して外用できる。2、分子量が約822と大きいため、ステロイド(約500)と異なり正常皮膚からほとんど吸収されない。3、依存性がなく外用中止による急激な悪化を生じない。4、眼の周りなども比較的安心して外用できる。などですが、注意点として1、外用開始数日はヒリヒリ等の刺激感(多くは一週間以内に消失)が見られることが多い。2、びらん面や掻破痕のあるところは使用できない。3、外用部位を長時間紫外線にさらしてはいけない。4、外用局所の細菌、特にウイルス感染症に注意が必要。5、長期外用における悪性リンパ腫等発生に関する安全性の未解決(現段階では容量を厳守すれば問題なし。)、などが今後の検討課題といえます。

タクロリムス軟膏の大きな特徴は、今まで顔面、頚部といった長期間ステロイド軟膏外用のしづらかった部位にも安心して使用することが可能になった、といえます。