|
1.特発性蕁麻疹・・・急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹(発症より一ヶ月を越える)
2.物理性蕁麻疹・・・温熱、寒冷、圧迫、日光、機械的刺激等
3.コリン性蕁麻疹・・運動、入浴等の発汗刺激や精神的緊張(冷や汗)
4.アレルギー性蕁麻疹・・即時型反応で食物、薬物などの抗原刺激
5.イントレランス・・NSAID(非ステロイド系消炎鎮痛剤)の刺激
6.接触蕁麻疹・・・・抗生物質、消毒剤、ラテックスゴム、毛虫皮膚炎
7.食物依存性運動誘発アナフィラキシー
8.血管性浮腫
このうち原因の分からない特発性蕁麻疹症例が全蕁麻疹症例の72%、物理性蕁麻疹が16%、コリン性蕁麻疹が3,8%、アレルギー性蕁麻疹は3,4%といわれています(Champion,2310例の蕁麻疹症例の検討、Bri J Dermatol,119:427〜、1988)。
一般的に蕁麻疹といったらアレルギー性疾患と考えられがちですが、仮に100人の蕁麻疹患者がいたとして約70人はなかなか原因が分からない、アレルギー機序に基づく人は3人位しかいない、ということになります。
発症のメカニズムはIgE抗体を介する即時型アレルギー機序と非アレルギー機序の二つに大別されますが、後者の機序によって発症する場合が多いようです。アレルギー機序に基づく場合の原因食品としては乳製品、鶏卵、小麦が三大アレルゲンとされ、以下ソバ、エビ、魚、果物などが多いようです。
またほとんどの症例が小児、多くは3歳以下が過半数を占めるようです。非アレルギー機序による食物の関与は仮性アレルゲンとイントレランス(不耐症)に分けられます。仮性アレルゲンとはヒスタミンまたはヒスタミン様物質をたくさん含んだ食物の摂食によって発症するもので、タケノコ、ヤマイモなどがこれに該当します。これに対してイントレランスとは、もともとIgEを介さないでアナフィラキシー様の症状を起こすものを指しますが、一般的にはアスピリン(サリチル酸系の非ステロイド系消炎剤)不耐症を初めとするNSAIDとの交叉反応により発症すると考えられており、用量依存性で一定量以上のサリチル酸含有食物や食品添加物、人工着色料、防腐剤を多く含有する食品の長期間摂食により生じる場合をいいます。
すなわち、アスピリン等のNSAIDを服用しなくとも、サリチル酸含有食物の摂食で蕁麻疹が発症します。ただその機序についてはいまだはっきりと結論が出ていません。
即時型アレルギー機序による蕁麻疹の中で特殊なものとして、最近果物類によるアレルギーがあります。特定の単独の果物に対して発症するのは比較的稀で、多くは花粉症またはラテックスゴムとの交叉反応によって発症すると考えられています。
果物アレルギーを誘発する花粉類としてシラカンバ、ハンノキなどがあり(スギ花粉との関連は少ない)、これらの花粉類と交叉反応を起こす果物にはウリ科のメロン、スイカ、バラ科のリンゴ、ナシ、モモ、サクランボ、ビワなどがあります。ただし、この場合の症状は全身性の蕁麻疹を起こすことは稀で、口腔刺激感、口唇腫脹、咽喉頭閉塞感などの局所的な症状がほとんどのようです(Oral Allergy Syndrome)。
また天然ゴムによるIgEを介した即時型アレルギー反応を示すラテックスアレルギー患者においても果物との交叉反応が認められており、バナナ、クリ、アボガド、キウイ、トマトなどが多いようです。この場合は、蕁麻疹以外に重篤なアナフィラキシー反応を起こすことがあり注意が必要です。
原因となる薬剤で比較的頻度の高いものとして、抗生物質(ペニシリン系、セフェム系など)、NSAID(アスピリンその他)、ACE阻害剤(カプトプリル)、抗真菌剤(アゾール系)、抗結核剤(ストレプトマイシン、リファンピシン)、造影剤、抗痙攣剤(カルバマゼピン)、経口避妊剤、サルファ剤などがあります。
抗生物質は主にIgEを介した即時型アレルギー機序により、NSAID(アスピリン等)の場合はIgEの関与はなく組織シクロオキシゲナーゼ阻害によりロイコトリエン産生が亢進し、血管透過性が亢進して蕁麻疹が生じる、とされています。
アスピリンと蕁麻疹の関係は以下の三つがあります。
1.アスピリン自体が蕁麻疹の原因となる場合(上記記載)。
2.アスピリンが蕁麻疹を悪化させる。(悪化因子)
古くより、慢性蕁麻疹患者がアスピリンおよびNSAIDの服用によって、蕁麻疹自体の悪化を生じていることはよく知られています。
3.アスピリンが蕁麻疹発症の増強因子として作用する。(増強因子)
ある食物抗原に対する即時型アレルギーが存在する患者がその食物を食べた後に運動負荷が加わった場合に、全身の蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下といったアナフィラキシー症状を呈することがあり、これを食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(FDEIA)といいますが、本症ではアスピリン前投与で反応が増強され、時には運動負荷が加わらなくても、アスピリン+食物負荷のみで反応を生ずることもあります。いまのところ即時型アレルギー反応の増強に関するアスピリンの機序は不明です。
原因物質との接触によって生じる蕁麻疹をいいます。遅延型のアレルギー接触皮膚炎に対応して即時型接触皮膚炎と呼ばれます。アレルギー性と非アレルギー性の二つがありますが、アレルギー性の場合は経皮吸収された抗原が肥満細胞上のIgEと反応の結果膨疹を形成しますが、非アレルギー性の場合は原因物質が直接肥満細胞に作用します。
前者の原因として抗生物質、ヒビテン(グルコン酸クロルヘキシジン)などの化学物質、ラテックス、魚介類(エビ、カニ)などの蛋白質抗原があり、後者の原因としてアルコール、毛虫、イラクサなど多数の物質があります。本来は接触部位の蕁麻疹ですが、重症になると接触部位を超えて膨疹を生じ、気道症状を伴いアナフィラキシーショックを生じることもあるので、注意が必要です。 |